コーヒーカップの表紙が目印 ヨコイエミ『カフェでカフィを』
▲右…『カフェでカフィを』、左…『るきさん』
コーヒーカップが回る表紙。一通り読んだあと、この表紙の粋さに思わず膝を叩いた。
ヨコイエミ著、コミック『カフェでカフィを』。16篇のショートストーリーで構成された本作は、そのすべてがカフェ/コーヒー/お茶にまつわるお話でつづられている。
僕が個人的に好きなエピソードは「言葉を話せる自販機と缶コーヒーのお話」。意思疎通できる自販機と缶コーヒーがあったら、こんな会話するだろうなあ……と納得してしまうのは、作者さんの視点の妙技だろう。
そんな自販機の前を行き来する人々にもまた物語があって……
どこか身近な登場人物たちが繰り広げるオムニバスは、"カフィ"を軸に物語がつながり、連鎖していく。
決してジェットコースター的な急展開があるわけではない。だがシンプルかつ計算され尽くしたコマ割りから生まれるスピード感は心地よく、まさにきゅるきゅると廻るコーヒーカップのようではないか。
読み終えた後は高野文子の作品を連想した。まるみを帯びた、見ていて楽しい描線。存在はフワフワしているのに、地に足のついたリアルさを伴うキャラクター像。
作者さんのTwitterを見てみたところ、高野文子は「最も敬愛する漫画家さんのひとり」とのこと。納得。
本棚から『るきさん』を引っ張り出して、読み比べるのも楽しかった。