キタキツネの赤ちゃん

CM、芸能、担々麺

高橋一生CM「dtv ふたりをつなぐ物語」篇

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『カルテット』ファンとしては触れるしかない。NTT DOCOMOが送るdtvのCM「ふたりをつなぐ物語」篇だ。

高橋一生演じる旦那さんと、長澤まさみ演じる宇宙飛行士。宇宙で働く長澤と、地上で暮らす高橋の心のつながりを描いたCMである。

CMタイトル「ふたりをつなぐ物語」が表すように、高橋と長澤はdtv配信の映像作品を通して感動を共有する。宇宙と地上という膨大な距離感があっても、物語という共通点があれば同じ時間を過ごせるという主張だ。ブルーノ・マーズが歌うテーマ曲「Talking to the moon」 も、遥か彼方にいる妻に語りかける高橋の心情を表していて良い。

月並みな言い方をすれば「離れていても心はひとつ」だろうか。宇宙飛行士だから月並みとか、そういうダジャレではない。断じて。

監督したのは映像ディレクターの田中嗣久だ。田中監督はグリコのCMでも"空と地上"を演出。スケールが大きい表現はお手の物である。

繊細な演出と俳優の身体性

宇宙と地上という大柄なコントラストは、ともすれば映像が持つスケール感そのものが一種の"目くらまし"になってしまう。だがこのCMは、小道具やセットまで繊細に演出。細部から世界観の表現に成功している。

例を挙げると、高橋が暮らす部屋にある月をモチーフにした間接照明や、宇宙に関する書籍類。銀河を思わせる水槽で泳ぐ金魚。窓に置かれた望遠鏡はたぶん、長澤の私物だろう。望遠鏡というアイテムひとつで、地上と宇宙の距離感、妻を思う旦那の心情がくみ取れる。

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余談ではあるが、高橋一生が洗濯物をたたむ技術の高さはスタッフ間でも評判だったという(2017年3月21日・朝日新聞朝刊より)。こういった高橋のスキルも、CMのリアリティを支える骨子といえよう。一人暮らし歴が長い高橋ならではだ。

俳優個人という点では長澤も負けていない。170cm近い体躯は宇宙飛行士のタフさを内包。メイキング映像をみると、ワイヤーアクションに臨む身のこなしに驚かされる。

雑踏のなか歩く高橋の後ろ姿はどこか儚げで、そんな高橋を見下ろす長澤は宇宙のなかで孤独だ。

ふたりの間に「妻はいつ地球に帰ってくるのか」という意識はない。だからこそ宇宙と地上という距離感は存在を増し、その距離感があるからこそ、dtvが主張する「物語がふたりをつなぐ」メッセージが生きるのだと思う。