キタキツネの赤ちゃん

CM、芸能、担々麺

ブルゾンちえみの魅力は上から目線と親近感のギャップである

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(画像はブルゾンちえみTwitterより)

濃いメイクにキャリアウーマン風の服装。上から目線で世の女性へアドバイスする芸風。

お笑いタレント"ブルゾンちえみ"の人気が止まらない。

テレビ好きにはもはや説明不要だろう。両脇に長身のハンサムを従え、"ブルゾンちえみ with B"として登場。「ぐるナイ!おもしろ荘 若手にチャンスを頂戴今年も誰か売れてSP」で一躍人気芸人の仲間入り。今ではバラエティ番組に引っ張りだこ。ドラマへのレギュラー出演も決まるなど、活躍の幅を広げている。

いったいこの女性芸人、なぜにこれほどまで人気なのだろうか。

「キャラクター芸人」の潮流

ブルゾンが見せる「実在しそうな架空キャラクター」ネタは、彼女以外にも多くの女性芸人がやっている。もともとは清水ミチコが「夢で逢えたら」(1988)で演じた"伊集院みどり"だろうか。わからない人はググってほしい。
2000年代以降は友近柳原可奈子、最近になって平野ノラ、横澤夏子ら女性ピン芸人が同カテゴリーに当たる。

そんな架空キャラの最先端がブルゾンだ。先達の遺伝子に「上から目線のアドバイス」を融合。with Bのインパクトもあり、見た目、クセになるネタの両面を完備。話題になるための手札がそろっている。
この完成されすぎた芸風について、伊集院光は「作られたニオイ」「ケミカル臭」といわしめているが、伊集院による指摘はのちに挙げるブルゾンの長所への布石としたい。

短所は本当に短所か

一方でブルゾンの短所を指摘する声も。芸能ニュースサイト「Techinsight」はブルゾンの特徴を以下のように評価した。

ブルゾンちえみの“弱み”をあえて挙げるならば、突然振られた時の返しではないか。この日は大政絢が「みそラーメンが好き」という話題となり、「ラーメンは何が好き?」と聞かれたブルゾンちえみは「塩」と普通に答えて周囲をがっかりさせた。

トーク番組は、お笑い芸人にとってチャンスであり関門だ。ネタが人気になるぶん、ハードルも上がる。ハードルを上げておいてトークで滑ると、周りの落胆も大きいだろう。

しかし最近の「女性架空キャラクター芸人」はどうか。平野ノラはご存じ「しもしも~」で、何を振られても対応。横澤夏子トークの切り返しは抜群。柳原可奈子は司会もこなす器用っぷりで、友近のオールマイティさは言わずもがなだ。

彼女らと比較した際、ブルゾンの「トークの鈍さ」は逆に強みにならないだろうか。以下にその根拠を説明したい。

 

3月14日、ブルゾンが新ドラマ『人は見た目が100パーセント』に出演すると発表された。同日の「ノンストップ!」で桐谷美玲水川あさみと写真撮影する姿が放送。その際ブルゾンはスタッフから「ボーッと見すぎ」と指摘され、しゃがみこんでしまった。

撮影した映像を見たブルゾンは「動きすぎ!」と自分へダメ出し。口元を手でおさえ、恥ずかしがる素振りを見せた。

ネタ中は"上から目線キャラ"を貫いていながら、素に戻るとこの一般人感。なんだ、可愛いじゃないかちえみ!

めざましテレビ」にも貴重な姿が映った。自身が女優デビューすることについて「私でいいんですか?」とコメント。水川あさみ桐谷美玲らと並ぶことについては「なんか、慣れないんですよね」と言った。

つまり、ネタをやっていないときのブルゾンちえみは、ブルゾンちえみではなく"素"。完全な「藤原史織(本名)」その人になるのだ。すると伊集院光が言った「ケミカル臭」の指摘が活きてくる。

with Bとのネタは、まぁぶっちゃけた話、ヒットしそうな要素の合成だ。ところが素のブルゾンに戻ったとき、それは簡単にはがれた。"キャラクター性"という合成着色料を落としたことで、視聴者に強い親近感が生まれるのだ。

お笑い番組での「ネタ飛ばし」とその後の流れ

ブルゾンが生む"親近感"は2月の「R-1ぐらんぷり」で発揮された。

番組でブルゾンはwith Bを除いてひとりで出演。ネタ中にセリフを忘れてしまい、舞台上で数秒間黙る場面があった。雨上がり決死隊・宮迫からネタの出来栄えについて水を向けられると、悔し涙を見せた。確かに優勝は逃した。だが視聴者へ与えたインパクトはその日一番だっただろう。

ネタ披露のあとに行われた「お茶の間投票」では最多44%を集めている。(ネタを飛ばしたからか)審査員票は伸びずに優勝ならず。しかしこれにより、ブルゾンが生む親近感が視聴者に伝わった。お茶の間投票が同情票であることは言うまでもないが、ハプニングにより"上から目線キャラ"は良い意味で地に落ちた。血の通ったひとりの女性としてのブルゾンちえみが現れたのだ。

R-1ぐらんぷり」後にブルゾンのTwitterへ慰めと励ましのメッセージが集まったことも、ブルゾンが醸し出す親近感の証明だろう。

ここに「キャラクター性と素の表情のギャップ」という、ブルゾンにしかない魅力が生まれる。当記事をご覧の方は、バラエティ番組に出るブルゾンちえみの「キャラを演じていない受け答え」に注目してみてほしい。まず先輩芸人から何か振られるじゃん? そんで、テンプレートっぽい"切り返し"をして、その後のフリートークが注目ポイントよ。